大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和61年(行ツ)56号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人萩沢清彦、同福田平、同船岡実、同近藤紘一、同池田稔の上告理由第一点について

原審の適法に確定した事実関係の下において、被上告会社が参加人組合に対してした本件食堂の使用制限及び屋外集会開催の拒否が施設管理権を濫用したものとはいえず、したがつて、右使用制限等が労働組合法七条三号所定の不当労働行為に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

同等二点について

被上告会社が参加人組合及び被上告会社内の他の労働組合(以下「訴外組合」という。)との間の昭和四九年度夏期一時金交渉に当たり、他の要求項目との一括妥結を要求し、その結果、右一括妥結には応じられないとの態度を採つたため交渉が長引いた参加人組合に所属する組合員に対する右夏期一時金の支給時期が、右の要求項目を受け入れてさきに妥結した訴外組合所属の組合員及び非組合員に対する支給時期よりも四日間遅れたとしても、被上告会社が右一括妥結の要求に固執して参加人組合との間の右交渉の妥結を意図的に遅らせたものとはいえないから、被上告会社の右行為が労働組合法七条一号及び三号所定の不当労働行為に当たらないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同三点について

原審の適法に確定した事実関係の下において、被上告会社が参加人組合及び訴外組合との間の組合掲示板貸与に関する交渉に当たり、両組合に対して同一の貸与条件を提示し、これを受け入れた訴外組合に対しては組合掲示板を貸与し、これを拒否した参加人組合に対しては組合掲示板を貸与しなかつたとしても、右貸与条件が正常な労働組合であれば到底受け入れられないような不合理なものとはいえないから、被上告会社の右行為が労働組合法七条三号所定の不当労働行為に当たらないとして原審の判断は正当として是認することができる。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤哲郎 裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 四ツ谷 厳 裁判官 大堀誠一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例